相続手続の流れ

親族が亡くなってしまったが、相続手続を進めるために何からすればいいのか分からない、遺産の分け方で折り合いがつかない場合、どう解決すればいいのか分からない、そんなお悩みを持つ方へ向けて、相続の大まかな流れを解説します。

1 相続人の調査

まず、遺産の分け方を決める関係者である相続人が誰なのか確定させる必要があります。誰が相続人になるのかについては、こちらの記事をご参照下さい(相続人は誰?)。

相続人の調査は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本を取り寄せて、法定相続人を確定させる方法によって行います。戸籍謄本は、本籍地があった地域を管轄する市区町村役場へ請求する必要があります。

2 遺産の調査

次に、協議の対象とする遺産の範囲を確定させる必要があります。

被相続人が死亡時にどのような財産を所有していたかについて、法定相続人が調査します。代表的な財産としては、不動産、預貯金、有価証券、現金などが挙げられますが、借金などの債務も負の財産であり、遺産の範囲に含まれますので注意してください。

3 遺言書の有無の確認

被相続人が遺言書を作成していた場合、法定相続人の間の協議結果より被相続人の意思が優先され、遺言書の内容に従った効果が生じます。

なお、被相続人は、遺言書で相続人の相続分を指定したり(902条1項)、遺産分割の方法を指定するだけではなく、遺産分割方法を第三者に任せたり、5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止するといったことも遺言書で行うことができます(908条1項)。

4 遺産分割協議

相続人と遺産の範囲が確定し、遺言書が無い場合、法定相続人全員が協議して遺産の分け方を決める必要があります。相続人のうち、1人でも協議内容に合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。

遺産分割の協議の方法について、特に指定があるわけではありませんが、将来の紛争を予防するためには、書面など形に残る方法で協議することが望ましいでしょう。

遺産分割協議が成立したら、合意した内容を書面にした「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員で署名・捺印した方がいいでしょう。「遺産分割協議書」は必ず作成する必要があるものではありませんが、不動産の登記手続や、預貯金の解約、名義変更等を行う際に必要となりますので、作成した方が望ましいです。

5 遺産分割調停

遺産分割協議が成立しなかった場合、相続人は、家庭裁判所に対し、遺産分割調停の申立てを行います(家事事件手続法49条1項)。

この手続は、裁判官1名と裁判所が選任した調停委員2名が、各相続人を裁判所へ呼び出し、それぞれの言い分を聞きながら、お互いの合意できる可能性を探るという手続です。

仮に、相続人全員で協議が整えば、調停が成立したものとして、裁判所が協議内容を「調停調書」にします。この裁判所が作成した「調停調書」は、確定した判決と同じ効力を有するという強力な効力を持っています(家事事件手続法268条1項)。

これに対して、協議が相続人全員との間で整わなかった場合、調停は不成立となり、終了します。

6 遺産分割審判

遺産分割調停が不成立だった場合、家庭裁判所の遺産分割審判手続に進みます(家事事件手続法272条4項)。

この手続は、相続人が提出した資料等から、裁判官が、誰にどの遺産を相続させるのか決定する手続です。裁判官の決定した内容は、「審判書」に記載され、執行力のある債務名義と同じ効力を有します(家事事件手続法75条)。

審判内容に不服がある場合は、審判結果の告知を受けてから2週間以内に高等裁判所へ即時抗告をすることができます(家事事件手続法85条1項、同法86条1項)。

7 まとめ

以上の相続の流れをまとめると、1.相続人の調査 と 2.遺産の調査 を行ったうえで、3.遺言書の有無 を調査します。これらの調査結果をふまえて、4.相続人全員で遺産分割協議 を行い、協議が成立しなければ、5.遺産分割調停 を申立てます。そして、調停が不調だった場合は、6.審判手続 へ進みます。

各手続は専門的な知識を必要とする場面が多々ありますので、相続手続でお悩みの方は、是非当事務所へ一度ご相談下さい。

関連記事

  1. 相続人は誰?
  2. 相続の放棄
  3. 遺留分とは?
  4. 相続手続における税金問題
  5. 遺言書とは
  6. 法定相続分とは?

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP