法定相続分とは?

相続人が複数いる場合の遺産の分け方は、相続人全員の話合いで決まれば問題ありませんが、相続人のうち1人でも合意しなかった場合、法律で決められた割合に従って、取り分が決まります。この取り分のことを、「法定相続分」といいます。

それでは、法定相続分はどのような割合で定められているのでしょうか。また、法定相続があった場合の処理はどうなるのでしょうか。この記事では、法定相続分とその処理について解説します。

1 法定相続分

法定相続分は、民法(以下、省略)900条1号ないし4号により、定められており、相続人の構成によって、大きく2つのパターンに分けられます。配偶者がいない場合と、配偶者がいる場合です。

なお、相続人が誰か分からない場合、こちらの記事をご参照下さい。(「相続人は誰?」

2 配偶者がいない場合の法定相続分

この場合、子、直系尊属、兄弟姉妹のいずれかが相続人になり、それぞれの人数で割った分が法定相続分になります。

例えば、子が3人いる場合、それぞれが1/3ずつ法定相続分を有します。

3 配偶者がいる場合の法定相続分

この場合、以下の3パターンに分かれます。

相続人の構成配偶者の法定相続分配偶者以外の法定相続分
(1)配偶者+子1/21/2
(2)配偶者+直系尊属2/31/3
(3)配偶者+兄弟姉妹3/41/4

配偶者以外の相続人が複数いる場合、上記の配偶者以外の法定相続分をさらに人数で割ったものが各配偶者以外の相続人の法定相続分になります。

例えば、被相続人の配偶者と両親が法定相続人の場合、配偶者が2/3、両親がそれぞれ1/6という割合で法定相続分を有することになります。

4 預貯金の法定相続

それでは、具体的な法定相続分が分かったところで、具体的な財産の分け方はどうなるのか見てみましょう。

預貯金は、各金融機関に対する債権です。債権は分割できるものは基本的に分割して相続することになりますが、平成28年12月19日最高裁判所大法廷決定(民集70巻8号2121頁)が、預貯金は、遺産分割前は、当然に分割されるものではなく、遺産分割の対象となることを明言し、遺産分割協議(相続人全員による合意)が成立するまでは、各相続人が単独で自らの法定相続分に相当する金額を引き出すことはできないことを明示しました。

したがって、預貯金は、概念としては、法定相続分は認められるものの、遺産分割協議が成立しないと、引き出すことができないものといえます。

5 不動産の法定相続

不動産の法定相続は、各不動産にそれぞれの法定相続分に応じた共有持分が認められるという形になります。この状態を遺産共有状態と表現します。

なお、令和6年4月1日以降は、不動産登記法の改正により、相続の開始と所有権の取得を知った相続人が所有権の移転登記を申請することが義務付けられました。これによって、遺産分割協議を行っている途中であっても、かかる義務のために、共有持分の相続登記を行わなければいけない場合が出てきたものといえますので、注意が必要です。

また、上記の所有権移転登記を申請した場合でも、遺産分割協議が成立した時に法定相続分を超える所有権を取得した人は、遺産分割協議によって取得した所有権の移転登記を申請する義務を負いますので、遺産分割協議が成立した後も注意しましょう。

5 まとめ

法定相続分は、相続人の構成によって変わりますし、財産ごとに処理が異なります。まずは、どのような法定相続分が相続人に認められるかについて調べてみてください。そのうえで、財産ごとに法定相続分の処理が異なることをふまえ、各相続人で遺産分割協議を行う必要があるでしょう。

法定相続分は、形式的には、遺産分割協議が成立しない場合に認められる相続の方法ですが、遺産分割協議を進める際に無視できる割合ではありません。遺産分割協議を早期に解決するためには、法定相続分を把握したうえで各相続人の利害関係を調整するという作業が必要となります。

当事務所は、法定相続分や財産の内容だけではなく、親族間の関係等様々な事情を考慮し、積極的に早期解決に向けた提案をさせていただきます。遺産分割協議でお悩みの方は、是非当事務所へご相談下さい。

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